2022年12月5日月曜日

できること

 部内随一の理性の強さと、それをさらに上回るチーム愛を持つ凛から番をもらいました、4年の二村杏太朗です。僕が何度鬱陶しく絡んでいっても、そのたびに無視せず対応してくれて感謝感謝です。悩みもだいぶたくさん聞いてもらったかと思います。ありがとう。


 はじめに、この文章を読んでくださっている皆さんへ注意があります。それは、ここから先の文章には僕の偏見や先入観に基づいた内容が多く含まれているということです。あくまで個人の一意見として流していただけると幸いです。


 それでは始めます。まず、皆さんに2つ、問いを投げようと思います。


問1.努力が才能に勝ることがある。○か✖️か?


問2.チームに必要の無い人間は1人もいない。○か✖️か?


 答えは両方とも✖️です。これから解説に移ります。

 まず問1について。これは僕の人生で解説できます。幼稚園で入団したサッカークラブでは下手なせいでいじめられ、小学4年で再び始めたサッカーでもレギュラーになれず年下にポジションを取られ、転校した先でやっとレギュラーになれたかと思えば中学最後の大会でPKを止められて負け、高校で懲りずに続けたサッカーも半年で挫折して辞め…。そしてラグビーを始めた後はどうだったかというのは、これを読んでくれている部員の皆さんが一番よく分かっていることと思います。対して、あまり力を入れず、人並みにしか努力していなかった学業は、なぜか周りの人、自分よりも努力しているであろう人よりもうまく運んでいきました。このように、僕の22年間あまりの人生は、人には得意不得意が明確に分かれていること、そしてそれは努力でどうにかなるものではないことを思い知るには十分すぎるものでした。

 ラグビーはよく、「どんな人でも輝ける」という一文とともに宣伝されることが多いですよね。新歓の時期に、僕たちは何度もこの台詞を使ってきたかと思います。考えてみると、よくこんな大嘘を平然とつけたものだなあ、と感心してしまいます。実際、凛や陸が先に述べてくれたように、様々な個性が活きるスポーツではあります。ヒットの強さ、タックルの上手さ、体の大きさ、パスの上手さ、体力、怪我のしにくさetc…。しかし、これらの能力を、努力しているにも関わらず1つも手に入れられない人間というのが一定数いることを、この一文は完全に無視しています。僕の場合は努力不足が原因かもしれませんが、明らかに努力しているにも関わらず自分の強みを見つけられなかった人間が、皆さんの周りにも1人はいたはずです。いない、と答える人は、おそらくそういう人がいたことに気づかなかっただけなのだと思います。

 次に、問2について。これに関しては、少し表現を誇張しすぎてしまったかもしれませんね。実際には、「チームには需要の濃い人と薄い人がいる」です。上手な選手は多少怪我をしていても試合に出場することを望まれますが、そうでない選手は違いますよね。これが「需要の差」です。ラグビーに限らず、スポーツでは勝つためにチームが最善手をとることは当たり前ですから、これは誰が悪いわけでもありません。強いて言うなら悪いのは能力の無い人ですが、そんな人はチームにとってなんのメリットにもならないのかと言われれば、それは違います。

 ではどんなことができるのか。僕が思うポイントを、2つ話そうと思います。

 まず1つ目は、「自分の武器を見つけること」です。陸や凛が既に話してくれていますね。これはとても単純な話で、何も武器が無いなら、それを見つけて磨けばいいわけです。実力の無かった人間が力をつければ、上の人間もそれに負けじと力を磨きます。追い越し追い越されの関係の中で互いを高め合う、正に切磋琢磨、ボトムアップというやつです。おそらくこれが、現状実力の無い人間が最もチームに貢献できる方法なのではないかな、と思います。元から才能が何も無かった僕には自分の武器を見つけることは敵いませんでしたが、後輩の皆さんには、必ず何か才能があるはずです。自分には才能が無いと考えている人がいたら、それはまだ見つかっていないだけ。皆さんには、それを見つけるのに十分すぎるほどの時間と、見つける努力ができる心の強さがあります。皆さんなら必ず見つけられると、僕は信じています。

 そして2つ目。これが最も大切で、それは、「誰にでもできることを誰よりもやる」ということです。おそらく、1つ目を達成するには時間がかかることでしょう。その間、どうやってチームに貢献するか。それはもう、誰にでもできることをするしかありません。練習の準備、試合前アップの準備、対戦相手の分析、練習中の声出し、フィットネス、アフター、戦術への理解、チームトーク時の発言、食トレ、スタッフさんのお手伝い、部活外の仕事(ごみ捨てや物の持ち運び、それぞれに割り当てられた広報や備品の仕事など)…。やれることは、探せば無限に出てきます。それらを率先して全てやるのです。特に、「誰もやりたがらないことをやる」ことが大切です。なぜなら、もしこれができれば、それは「自分にしかできないこと」となり、チームからの需要を生み出す「武器」となるからです。

 「プレーで活躍しなければ嬉しくもなんともない、雑用ばかりなんて…」と思うかもしれません。その通りです。プレーは評価されないのに雑用をやり続けるモチベーションを保ち続けるのは容易ではありません。そんな時はどうするか、僕の場合を参考までに話そうと思います、というか僕のことを話したいだけですが笑。僕は、辛い時、よく自分に次の問いを投げかけます。


問3.君はチームメイトが好きである、○か✖️か?


 答えは○です。100回くらい余裕で重ねられるほどの○です。特に同期はその中でも特別。スポーツで結果が残せず大のスポーツ嫌いになった僕が、なぜそれでもラグビーを続けているのか。それは、同期が大好きだからです。ドジで間抜けで役立たずな僕のことを、彼らは一度も下に見たり、見捨てたりすることがありませんでした(もしあったとしても、少なくとも、僕はそう感じたことはありません)。あくまで対等な立場で、間違っていることは厳しく叱ってくれたし、自主練習にも嫌な顔一つせず楽しそうに付き合ってくれた。覚えが悪い僕に、根気強く何度も教えてくれた。遊びにたくさん誘ってくれたし、くだらない話にも付き合ってくれた。試合に出られずサポートしかできなかった僕に、感謝の気持ちを伝えてくれた。僕の人生で、ここまで自分を大切にしてくれたと感じる仲間はいませんでした。そんな彼らが試合に勝って喜んでいる姿を想像すれば、自身が置かれている境遇などなんのことはありません。

 話を戻しますが、モチベーションが低下しそうな時は、仲間の顔を思い浮かべてみるのが良いかもしれません、というお話でした。


 ラグビーというのはチームスポーツです。チームというのは、何もフィールド内にいる選手だけではありません。フィールド内の選手が最も勝敗に大きく影響するのは間違いありませんが、試合に出られなかった人、日頃から練習・試合の準備や車の手配、怪我やコンディションの予防・ケアを徹底してくれるスタッフさん、それを補助してくださっている藤本さん、お忙しい中でも何度も部活に来て、的確なアドバイスやモチベーションを高める言葉でチームを支えてくださっている佐々木先生や土門さん、左海さん、塩谷さんなど、名大ラグビー部には多くの味方がついています。それぞれに「できること」は異なっていて、部へ貢献できる度合いにも差がありますが、それぞれが自身の「できること」を最大限頑張る限り、問2の答えは「○」であり続けます。部のメンバーそれぞれが、「自分がどれくらいチームに貢献できているか」よりも「自分が可能な限りのことをできているか」を考えて行動する姿こそ、僕の理想のチーム像であると考えています。


 次は、我らがバックスリーダーの奥田くんに回そうと思います。表に出さないだけで、彼は今年1年間とてつもない苦労をしてきたと思います。自己主張を抑え、感情を殺し、自分の利益よりも同期やチームを重んじる彼の姿勢に対して、僕は尊敬しています。誰にでもできることではない。あと2週間、もう少しだけ、一緒に頑張っていこう。

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